株式会社COMMUNE Inc.
暮らすように働く。「当たり前」を問いかけるデザイン会社。「株式会社COMMUNE Inc.」
みなさんこんにちは!札幌シゴト図鑑編集長の五十嵐です。
今回は、株式会社COMMUNE Inc.の上田さんにお話伺ってきました。札幌でイケてるデザイン会社を聞くと、必ず名前が上がる株式会社COMMUNE Inc.さん。
どこか北海道の空気を感じさせる、NATURE&COOLなデザイン。それを生み出す、上田さんの頭の中とは?
まずは上田さんご自身のことについて伺いたいです。デザインの仕事をはじめるキッカケは何だったんですか?
18歳の時に滋賀県から札幌に進学しましたが、大学ではデザインとはかけ離れた学部で勉強していました。大学を卒業したからといって、具体的に何かできるようになっている訳では無いですよね。僕はそのまま就職活動をせず、何となくモノづくりの方が自分に向いていると感じていたので、デザインの専門学校に入りなおしたんです。
同世代で美大に通っていた人はすでに卒業してキャリアを始めているので、不安はありましたね。だから学校は札幌で一番のところを選んで、学内の一番を目指そうと在学中は必死で頑張りました。卒業制作でグランプリを取る、というのをずっと目標にして。グランプリを取ることができれば、良い就職先が見つかると思っていて、最終的にはグランプリを頂きました。
格好良すぎます。どんな卒業制作を作ったんですか?
僕のはちょっとずるいかもしれないです(笑)。元々2年間過ごしてきた中のたった数ヶ月で完成させる1作品ではなく、2年間を反映した作品を作りたいと思っていました。
在学中に知り合いの美容師さんに美容室のフライヤーを作らせてほしいと頼んだり、知り合いのDJからクラブイベントのフライヤーの仕事をもらったり。そうしていつの間にかクライアントワーク含め100個以上作品を作っていたんです。
だから、僕の卒業制作は、今までに作ったデザインを約60のパネルにし、そのデザインを一つのビジュアルに再構成した大きなビジュアルを制作しました。
そこからCOMMUNEを作るまでは、どこか会社に所属して働いていたんですか?
そうです。そのグランプリのおかげか、人づてで紹介してもらい、前職のデザイン会社に入ることができました。やっとデザイナーのスタートラインに立てたという気持ちでしたね。
その会社で2年半勤めてから、フリーランスとして独立。その後法人化しました。デザイナーとしては独学の部分が多いので、他のデザイナーと比べるとちょっと変わっているかもしれないですね(笑)。
独立後、毎日帰宅は深夜、日付が変わる前に帰れただけでその日なにしようかワクワクするくらい、ある意味ブラックな暮らしをしていました。デザイナーって一見華やかだけれど、実際は全然豊かじゃなかったかも。
そうだったんですね。ちなみに、上田さんって今はおいくつですか?
43になります。
どうしてだろう、シゴト図鑑でインタビューさせてもらう方はそのくらいの世代が多いんですよね。
ちょうどロストジェネレーションど真ん中。就職氷河期もあって、キャリア形成が難しかった世代だとは聞きますね。デザイン業界の話で言うと、デジタル化によってデザインの仕事の構造が少し変わってきた頃で、昔に比べるとデザインの価格破壊が起こった時期でした。バブルも知らない僕ら世代はそういう空気が当たり前だったので、比較的問題意識が高い世代なのではないでしょうか。
なるほど。フリーランスになって、すぐ軌道に乗ったんですか?
最初は仕事がありませんでした。27歳で、2年半しか経験が無いと、まだまだ一人前のデザイナーとは言えないですし、仕事を持って出たわけでもなかったので。でも「アートディレクター」って肩書を名刺に入れて、ポートフォリオを常に持ち歩いて、誰にでも見せていました(笑)。とにかく人にはたくさん会っていた。そのうちにだんだん仕事が増えていって、2年目くらいからはある程度生活できるようになっていた気がします。
よく会社辞めたよなぁ、と今でも思うんです。忙しかったけれど、求められる仕事の質も高く、今思えばデザイナーが働く場としてはすごく良い環境でした。ただ、これからのキャリア形成を考えた時に、あまり明るい未来がその時は想像できなかったんですよね。
社会人経験はその1社のみですか?
そうです。しかも個人事務所で社員も少なかったので、いわゆる大企業のルールみたいなものは今もわかっていないような気がします。2005年にフリーランスとして独立して、2012年に法人化しました。
そうして上田さんが作ったCOMMUNEがどんな会社なのか、教えてください。
これまで当たり前とされてきたことに疑問を持ち、自分たちにしっくりする形に再構築してできたコミュニティのような会社です。
デザイナーの仕事は、時間と成果が単純に比例しない部分も多く、クオリティを追求していくとどうしても長時間働くことになりがちです。当時も毎日自分のプライベートを犠牲にしながら働くことが「当たり前」でした。
ワークライフバランスという言葉を聞いても僕自身はどうしてもそのバランスをとることが難しく、頑張って働くことがプライベートを犠牲にすることになってしまっていたんです。このまま一生自分の時間を切り売りしながら暮らしていくのかな、とずっと不安がありました。
ある時ワークライフミックスという言葉を見つけて、これならできるかも、と思ったのが今の考えの基礎になっていると思います。仕事と生活の境界線をなくして、双方が豊かになるようにできれば、無理にオンとオフを分ける必要も無いですよね。暮らしと仕事が相乗効果を生むようなシステムをつくりたいと思っています。
働き方、暮らし方をつくるための法人化、素敵ですね。
人生は短いと思っていて。短い人生の中では、自分がやりたいことを探すより、やりたくないことを一つずつ辞めていくことが大きなポイントだと思っています。
COMMUNEの仕事も経営のための仕事は一つもなく、全てがやりたいと思うような面白い仕事です。そういう意味ではクライアントにとても恵まれています。
一口にデザインと言っても色々なジャンルがあると思いますが、COMMUNEでは具体的にどんな仕事をメインでされているんでしょうか?(ポートフォリオを)見た感じだと生活や空間のデザインも手がけているように見えます。
最初はロゴや平面のいわゆるグラフィックデザインが多かったのですが、少しずつ領域が広がってきて、今は企業の経営戦略やブランドコンセプトなどから関わることが多くなりました。今は表層的なデザインだけでは成果はなかなか出しづらいと考えていて、企業とブランドコンサルティング契約を結び、長期的にブランドを作っていくやり方にシフトしています。
ブランドが持つ力や、あるべき姿を、デザインの力で削り出しているということでしょうか。純粋なデザインの美しさと、数字となって現れるマーケティングとのバランスをとるのがすごく難しそうです。
たぶんマーケティングって大企業が市場調査をして、その市場をどう獲るか、という時に出てくる話だと思うんです。小さなケーキ屋さんにマーケティングの話をしてもあまり意味がないような気がしています。それよりはまずその事業やプロジェクトの本質をきちんと読み解いて、言語化・ビジュアル化することが大切なのかなと思っています。
そうは言っても、もちろん数字も大事にしています。プロジェクトの初期段階では入念にヒアリングをしますし、数年分の決算書なども共有いただいて、経営の数値目標も含めて、ブランディングを進めていきます。
かっこいいロゴに変えたら何か良くなるという表層的なものではなくて、デザインの前の部分をきちんと整理してから、デザインに進むというやり方です。
決算書まで?!なるほど……。「パートナー」がキーワードですね。
COMMUNEはあまり手を動かさないデザイン会社かもしれません。デザイン作業よりも前のヒアリングやコンセプトづくりの部分が7割ぐらいを占めるので、そうなります。
また、単純にチラシやカタログなんかのルーティーンワークもほぼ無いので。
上田さんは、1年の内1ヵ月をスウェーデン・ストックホルムで暮らしていると聞きました。どうしてスウェーデンなんですか?
大学時代に留学していたので、友達が沢山いるんです。本当は毎年行きたかったけれど会社員やフリーランス時代は忙しくてそれも叶わず。2011年に、ある程度スタッフ増えて仕事が安定してきたので、スウェーデンと関わりを深めたくて、毎年行くということを決めました。当然滞在中も遠隔で仕事をするし、ただの旅行じゃなくて、暮らすというイメージが近い。ただ行くだけでは面白くないから、「1/12 SWEDEN PROJECT」と名付けて1年のうち12分の1をスウェーデンで暮らしています。向こうでは友人の家や友人の家族の家にステイして、毎日料理もしますし、登山をしたり友達と飲んだり、普通の暮らしをしています。
スウェーデンの魅力を教えてください!
治安が良いし、色んな意味で穏やかな国。北欧の人はおとなしい人が多く、お互いの距離感を大事にするなど、日本人に似ているところもあります。社会の仕組みや福祉サービスが充実していて、将来や人生に不安を抱いている人が少なく、みんな余裕があって居心地が良いですね。
北欧のデザインのシンプルかつミニマルな特徴は、日本に似ている部分もあります。だから僕のデザインもどこか北欧っぽかったりすると思いますね。
スウェーデン以外の国に行こうと思ったりはしませんか?
10年くらいスウェーデンにしか行っていなかったのですが、この2.3年でいろんなところを訪れるようになりました。ここ数年は20年ぶりにパリやミラノにも訪れました。インターンが各国から来るので、彼らを訪ねたりしています。今だからわかるスウェーデンと他の国との違いも面白く感じますし、もっと他の国にも行ってみたいですね。
最近はどんな生活スタイルで過ごしているんですか?
今は朝方で、5時くらいに目が覚めてランニングをするようにしています。帰るのは深夜(笑)。アウトドアが好きなので休みはキャンプや登山に出かけたり、冬はスキーに行ったり。結構普通かもしれないですね。
多くの人が、北海道で憧れる生活ですね。意外と実現できている人って少なそうな気がします。
たぶん20代の時にできなかったことを今獲り返していますね。
ある程度札幌で事務所としての形ができて、そこから東京に移ろう、という話にはならなかったんですか?
関西人なので、基本的に東京に対するカウンターがあるかも(笑)。今は北海道の方が断然かっこいいじゃんって思っているから、ここでいい。仕事では結構頻繁に東京へ行くので、情報収集はしています。
ランニングコースが北大なので、農学部で飼育している牛や羊を眺めたりしていますが、都会のど真ん中にこんな環境があるのはなかなか珍しいですよね。もちろん東京には無い。食べ物はフレッシュで美味しいし、自然へのアクセスも簡単。東京のみんなこっちに移住すれば良いのに、なんて思っています。
今年から4年ぐらい続けている畑に会社のスタッフも参加できるようにしました。朝活って名目で野菜を掘りに行ったりしています。みんなやったことがないから新鮮だし、フレッシュな食べ物も手に入る。畑で繋がった人との縁もあったりします。
すごく楽しそうです。社員はいま何名くらいいますか?
僕以外に3人のデザイナーと、インターンが2人です。あとは香港とポートランドに一人ずつアライアンスメンバーのアートディレクターがいて、海外のプロジェクトがある時は一緒にやっていますね。
この先の展望は何かありますか?
リアルコミューン、作りたいですね(笑)。札幌から1時間くらいで行ける大きな森がある場所を整備して、エコハウスや畑をやりたい。小さなホテルなんかも作れたらいいな。
あと最近はこの事業をどう引き継ぐか、というのを考えたりします。80歳まで同じスタイルでやっているとは思わないし、誰かに託したいですね。
最高ですね。最後に、どんな人に来てほしいか教えてください!
ある程度の経験とスキルがあるアートディレクターとデザイナーは切望しています。札幌来てみたいな~と思っている人、いないかなぁ。
デザイン以外にも、例えばMEET.(自社イベントスペース)をもっと運用したい人がいれば、自分で自主企画してイベントを立ち上げられるし、カフェの運営なんかも出来る。それをマネタイズすれば自分の待遇だって変えられます。やりたいことを実現できる良い環境は整っているので、会社のスタンスに共感して、実行に移せる人に来てほしいですね。
基本的には3年以上経験のある人ですが、基本的には、です(笑)。考える力がある人がいいですね。いろんなことをやることになるので。
株式会社COMMUNE Inc.
①アートディレクター
②グラフィックデザイナー
正社員(試用期間3カ月)
能力・経験によって設定
①アートディレクター
企業や店舗、商品のブランディングにおける、アイデンティティ、グラフィックデザイン、パッケージ、ウェブサイトなど、様々なプロジェクトに関わるポジションです。ひとつとして同じ状況はない応用問題に対して、スピードを持って、より良い答えを導ける柔軟性が必要です。
②グラフィックデザイナー
多様なジャンルのデザインに関わることができます。
デザインやプロジェクトの細部が最も見える場所から、クオリティを上げていくスキルが必須です。
発想力や造形力はもちろん、多岐にわたる仕事の中で、デザインだけでなく、全体を俯瞰で捉える目と、プロジェクトの中心になる意識が必要です。
札幌本社[札幌市中央区北5条西11丁目8]
9時00分~18時00分(休憩1時間)
週休2日制
年末年始休暇
夏季休暇
有給休暇(祝日の日数分)
①アートディレクター
実務経験3年以上、2年以上勤務可能な方
推奨スキル:グラフィックデザインの経験/ウェブデザインの経験/Illustrator/Photoshop/InDesign
②グラフィックデザイナー
実務経験3年以上、2年以上勤務可能な方
推奨スキル:Illustrator/Photoshop/InDesign
①アートディレクター
ひとつとして同じ状況はない応用問題に対して、スピードを持って、より良い答えを導ける柔軟性がある人
②グラフィックデザイナー
発想力や造形力はもちろん、多岐にわたる仕事の中で、デザインだけでなく、全体を俯瞰で捉える目と、プロジェクトの中心になる意識がある人
2021年
若干名
応募/書類選考
面接
内定