EVENTS & COLUMNS
2021.03.04
札幌に住んでいる、働いている、住みたい、働きたい外国人のためのコミュニティ、「Job-S」のキックオフパーティーを2020年12月8日に行いました。
モデレーターは海外向け配信者かつこのレポートの文責、石井友章とブラジル出身の北大生、フェルナンド。
ロシア、中国、韓国、シンガポール、インド、ブラジルとバラエティに富んだゲストに参加していただき、終始和気あいあいとした雰囲気で行うことができました。
コロナ禍ではあるものの、オフラインで頼りになるコミュニティとして機能できればいいなと思っていたので、初回からすでに今後が楽しみなメンツが集まっていて嬉しい限り。
さて、実際のイベントはどうなることやら!レポートしていきますね。
ざっくり「ユーはなにしにサッポロへ?」と「ここがヘンだよ日本の企業」みたいなテーマで、日本に来た理由や来日前と来日後でどうイメージが変わったのか、など海外と日本の違いを話していければいいと思っていました。
1時間という短い時間で全員に深堀りするのは難しいので、まずは登壇者同士の「それわかるー!」みたいな共感や、配信を視聴している日本人が気づいてなかった「なるほどなー」といったポイントをあぶり出していきました。
お題をアナウンスした直後、「よし!じゃんけんして話す順番決めよう!」という提案が登壇者から起こり、なんかすごい日本っぽいというかこういうのは世界共通なんだなと会場全体で歓声が起こりつつ、もう早く話聞きたいぞー!とうずうず。
というわけで、まずはベタに日本に来た理由を聞いてみました。
「高校の時に日本のアニメが好きになり、日本の大学に進学したいと考えるようになったのがきっかけ」
最近は本当に日本のアニメ、ゲーム、ポップカルチャー、食べ物がポピュラーになってきているため、こういった動機で来日する人が多いんですよね。一部の外国人アニメファンからは聖地、夢の国と言われるほど人気だったりもします。
一方で、韓国と中国の参加者から
「日本は夢見てくる、というよりかはもっと身近な存在」
身近な存在、という点は日本人としてもそこはうなづけるなと思いました。あとやっぱり最初に日本に興味を持った理由はアニメとのこと(笑)アニメすごいな。
また、同じく韓国人の登壇者は
「一度韓国で働いてみたものの、環境が合わなかったので外国で働いてみようと思い、転職活動をした。イギリス、日本などの企業と面談したが、最終的に日本の企業が採用してくれて、それで日本に来ることになった。」
はじめは外国ならわりとどこでもよかったけど、日本に住んでみたら意外と楽しいなーと思い、今も札幌で暮らしていると言っていました。
大きく分類すると
・アニメやサブカル的な日本にあこがれて夢を抱いて来日したパターン
・ひょんなことから来日、そのままなんとなく住んだり働いてるパターン
この2つのパターンが多いなという印象でしたね。
ただ、モデレーターのフェルナンドからは
「ブラジルでもそういう親近感はある。日系ブラジル人も多いし、日本の通貨はブラジルよりも強いので、出稼ぎに来る感じの人が多い」
という、ブラジルならではの意見も。
「日本に来るのを夢見て来たけど、実際どうだった?」というのがやっぱり気になったので、そこを深堀りしてみることにしました。
「夢に見ていた日本は全部が秋葉原とか原宿とか京都みたいになってると思ってた。でも実際はただの街っていう感じ(笑)」
確かに僕も色々な国を思い浮かべるときステレオタイプ的なものが国全体にあると思ってしまいますねー。
「ただ、お寺や公園とか”アニメに出てくるような景色”がその街の中に溶け込んでいるのに気づいたから、自分が思ってた日本を探しに街を歩いたりするのがすごく楽しい」
個人的にはこの表現がすごく好きで、こういう視点で世の中を見れるってすごい素敵だなと思いました。
韓国人の参加者からは
「韓国と日本は歴史とか政治が色々複雑だから心配が大きかったし、差別されるんじゃないかと思ってたけど、みんなやさしい」
正直、こういった話題も絶対出てくるなと思って心の準備はしていました。”あるべき論”みたいな話をするつもりはないですが、事実としてそういう緊張感は常にあると思います。こういう発言をしっかりしてくれたご本人にも感謝していますし、こういった議論もオープンにできるようなコミュニティづくりをしていきたいですね。
「もともと日本人に対してのステレオタイプとしておとなしいとか静かなイメージがあったけど、住んでいたシェアハウスはパリピみたいな人もいるし面白いこと言う人もたくさんいるのがわかって面白かった。」
こちらも同じく韓国人の参加者からのコメント。色々心の準備をしながら来日した結果、思いもよらない方向でイメージが変わっていく話が聞けて本当によかったです。
実際日本に来てどうだった?という話の中で一番反響が大きかったこちらの話題、ぜひみなさんにも知ってもらいたいと思ったのでシェアします!
日本に来てストレスがたまることは「日本語上手!」とすぐに言われること。海外のコミュニティでも「nihongo jouzu」というフレーズは皮肉的に使われることもしばしばあります。一旦コメントを抜粋すると
「これは本当に一番気になる。言わないでほしい!(笑)」
「こんにちは、って言っただけで褒められるのはすごい腹が立つ。もう4,5年日本に住んでるのにそう言われるのが納得行かない(笑)」
「自分は『はい』って受け答えしただけで日本語を褒められた。思わず、まだ『はい』しかまだ言ってないですよ!って怒ったことがある」
「ただ普通の褒め言葉として言われるのはうれしい。簡単なフレーズを言ったときに言われるのは微妙」
自分も話してて耳が痛い部分がありました。抜粋にもあえて『(笑)』を多用した通り、終始ゲラゲラ笑いながら話していたのでそこまで辛辣な話題ではなかったと補足しておきますね!
一応僕から、単語だけでなく発音や文脈に沿ったワードチョイスなどで思わず「すごい!」と思って褒めてしまう場合がほとんどなので、そこはおべっかを使っているというよりも「僕たちの言葉を覚えてくれてありがとう」という意識はあるんだよー、とフォローはしておきました!
ただ一方でアジア系の参加者からは「日本語しゃべるのが当たり前と思われている」という声もありました。僕も日本人だと思って話しかけたら外国人だったという経験もあり、見た目で勘違いしていまう状況は避けられないものの、そこから「見た目似てるんだから喋れて当然」や「同じアジア人なんだし」みたいなレッテルが貼られてしまう場面は想像しやすいなぁと思ってしまいましたね。
ひとくくりに「外国人」としつつも、国・人種・性別などでまったく対応が違うということがあるため、改めて自戒の念も込めつつこういった話題もしっかりしていきたいと思いました。
ようやくこのトピックまでたどり着きました。Job-Sというコミュニティなので札幌(日本)で働くことについて深堀りしていきましょう!
まずは先輩後輩カルチャーになじめない、なじめるか心配という意見。
「先輩後輩カルチャーが苦手。自分で起業するかスタートアップで働きたい。」
「自分を100%だすためにはそういう気遣いはいらないと思ってる。」
「社畜になりたくない(笑)」
思ったとおり出ましたねこの話題。欧米系の参加者からこういった声が頻発していました。ただ、ここは一旦意見を全部出してから議論したかったので、アジア系の参加者にも質問してみました。
「韓国の先輩後輩カルチャーも厳しいけど、『こいつは俺の後輩だから助けてあげたい』みたいな方向に作用することが多い気がする。」
「日本は先輩からジャッジされてる感じ。どこかに正解があるような形でタスクが振られていって、先輩の思惑を察しながらやらなければいけないような感じがしんどい。」
正直、アジア系の各国も日本と同じだろうなーと思っていたため目からうろこでした。確かに先輩後輩カルチャーは二面性というか、作用の仕方が違うことがありますね。学生時代は「先輩の言うことは絶対だったけど、その分ちゃんと可愛がってもくれた」という印象がありますが、社会に出てからはその前者が割とフォーカスされがちな印象だったかもしれません。
日本の労働環境は世界と比べて決して羨むようなものではない、というのを割と耳にしていました。Karoushiという言葉が一般的になってしまうような感じですからね。この話題もなんとかポジティブな方向に持っていければと思っていましたが、なかなか難しいなと思い、とにかく意見を場に共有することを優先してその他にも懸念点がないか聞いてみました。
「とりあえず文系だと営業とか事務とかそういうことをやらされそうな感じはある。自分の専攻とか勉強を活かせないようなイメージはある。」
これは新卒採用文化が関係しているなーと思いましたね。多くの場合、大学で勉強した分野とは違う畑で仕事をすることが多いのも日本の就職事情の特徴かもしれません。
このトピックの締めくくりとして僕からは、「この話題を掘り下げて共有すること自体がこの会の大事な目的だと思っている。日本の企業が変わらなきゃいけない部分もあるけど、根が深い部分についてはある程度働く側も心の準備をしないといけないのかもしれない」とコメントしました。
もちろん、悪いものは変えよう!行動しよう!という動きもいいのですが、その間も実際こういった事象は起こってしまうので、まずはしっかり話を共有できる環境が大事だなと思い、こう発言してみました。
最後は「自分の国に帰るという選択肢はないのか」という話題です。ここで働く、という選択肢があるならその逆もあるはずですよね。ここでは「帰るとしたらどういうタイミングか」、「帰りたくない理由はないのか」みたいなことを話していきました。
「たまたま日本で勉強してたら北大生というカード、新卒で就職できるカードを手に入れたからそれを利用してみたいと思っている。帰りたいともまだ思ってない感じ。」
こちらは学生の参加者からの意見。消去法ではなく、チャンスがあるなら使ってみたいという前向きなスタンスですね。確かに新卒カードは一回しか使えないので使ってみるのはアリだよねー、と話していました。
「自分の国は日本と同じで”古風”な考えの人が多い。結婚して子供を作るのが一番の幸せ、みたいな人。自分はそれに抗いたい」
「母国の”あたりまえの生活”から逃げたいと思ってる」
日本人の視聴者も大きくうなづいていたこちらの意見。日本でも地方出身者が都市部で住んでいる理由もこういう部分あると思うし、僕も”あたりまえ”じゃなくしていきたいなと思ってます。個人的にはこういうマインドからもうちょっとポジティブな攻めの姿勢に変わってもっと楽しく人生が進んでいくのがいいのかなーと思いました。
というわけで笑いあり、シリアスありなJob-S第0回のイベントレポートでした。1時間で色々話したなーというのとモデレーションするのが大変でした!(笑)
オンライン配信もしていたのですが、日本人の視聴者と参加者のギャップがないように心がけていたつもりです。一人ひとりの意識を変える必要はないなと思っていて、むしろ向き合い方をいい方向に変えるためにはどうしようかと考えています。向き合い方が変わってくれば自然と自分の意識も変わってくると思うので。
これは日本人、外国人両方そうだなーと思っています。住めば都、郷に行ったら郷に従え、みたいな言葉もあるけど、僕は古くからある「まれびと」文化が好きで、新しいものは外からくる、みたいな考え方です。このコミュニティでは常に新しい学びがあるようにしていきたいと思います!
次回のレポートもお楽しみに!文責は石井友章でした!